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2009年4月 1日 (水)

賢いJazz

1


ある音楽家一家のお誘いで、セントポールにある Jazz Club に連れて行っていただいた。
個人的には音楽は好きなほうだが、特にジャンルにはこだわらず、
いいと思うものは何でも聴くようにしている。
基本的には断然ライブ派だが、アメリカに来てからというもの、
家ではほとんどテレビを観ないし、車をよく運転するので、
イヤホンを通さずに音楽を聴く機会が格段に増えた。
聴く媒体は、iTunes と iPod にお世話になるか、
一日中いい雰囲気の JAZZ が流れている JAZZ 88 FM


今回行った Jazz Club は、The Artists' Quarter といって、
1920年に建てられた歴史あるビル Hamm Building の地下にある。
ビルのエントランスには飾り天井が見事なエレベーターホールがあり、
昔気質でクラシカルな内装の床屋さんや、味にも定評があるビストロが入っていたりする。


The Artists' Quarter は、現役のミュージシャンたちによって運営されている JAZZ Club で、
様々なアーティストが日替わりでライブを行なう。
カバーチャージは無料のものもあるが、大抵$5〜$10ととてもリーズナブル。
この料金で本格的なジャズが生で聴けるのだからアーティストに申し訳ないくらいだ。


この夜に演奏したアーティストは“PETE WHITMAN'S X-TET”。
4人で演奏するのがQuartet(カルテット)だから、X-tetは10人で編成されている。
日中は音大の教授やプライベートレッスンの講師など職業は様々だが、
月に一度みんなが集まり演奏するという貴重な機会。
この大人たちが、ほんとうに格好よかった。
容姿は統一感がなく、Tシャツにジーンズの人もいれば、ドレスアップした人もいるし、
白髪のベテランもいれば、モヒカンにシャツをビシッと着た若手もいる。
一見自由な雰囲気を醸し出す彼らの演奏を聴いて行くうちに、
気ままに音を奏でているのではないことが、素人の私でもわかる。
一緒に連れて行ってくれた家族の、音大に通っているお嬢さんがこう言った。
「彼らの Jazz は、賢い Jazz なんです。」と。


なるほど。一心不乱にリズムを刻みだすドラマーも、
片手に2本、計4本のスティックを自在に操るビブラフォン奏者も、
歌うように吹きあげるトランぺッターも、みんなお互いのスキルを信頼し切っている。
Jazz は、その場のセッションから生まれるグルーブ感を愉しめる音楽だが、
彼らの演奏は、その場の空気や互いの音を愉しみつつも、
すべて計算し尽くされた緻密さを感じさせる。
野球のバッテリーのように、指のサインやアイコンタクトで、
見事なまでに10人の音が合わさり、紡ぎだされていく。
「音楽って、愉しい。」
そう思わせてくれるライブだった。


ミネソタには、ローカルな人々によるローカルな文化が根付いている。
地元企業や個人投資家による文化施設への出資、地元アーティストの支援、
美術館や劇場への子供無料招待や出張授業などの地域活動、食分野では地産地消、
そして、音楽も決して例外ではない。
ミネソタオーケストラも全米ではかなりレベルの高い交響楽団だが、
名声や権威を求めて海外公演に同じ予算をかけるなら、
それらを地域活動に活かそうという考え方なのだそうだ。つまり優先順位が違う。
それは内陸にあるという地域性も多いに関係しているとも思う。


一方で東京は、大なり小なり、歴史あるものから前衛的なものまで、
ありとあらゆる作品が世界各国から集まり、ある意味でカルチャーも飽和状態にある。
世界的に有名な美術館の展覧会が来ると連日長蛇の列ができるけど、
一体どれだけのひとがその本質的な価値を知っているのかはわからない。
アメリカよりずっと古い昔から独自の文化を持ちながらも、
国内外を含む幾多の作品から、観客が観たいものを選べる環境にある東京と、
将来を見据えて地域に投資し、それらが実り育まれて来たミネソタ。
そこに触れる観客の目や耳や感覚は、それぞれにどう研ぎ澄まされていくのか。
気になるところだ。


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コメント

(o^-^o)
おはよう!
東京は日曜日の朝、
今日も春のとても良いお天気です。
音楽を聴く習慣は私もあまりなかったけど、
ここ最近は聴いています。坂本龍一さんが最近だした
新しいアルバムがもっぱらのお気に入りナンバーという
いたって直球ですが。もしまだ聴いていなかったら送るから言ってね。yoga はどうですか?
こちらは、昨日とうとうかとちゃんもyogaデビューしたよ。それからジオの舞木も。私が2年通っているヒカルさんのクラスは、この2年で倍以上に生徒さんが増えて大人気、それでも丁寧さと、決め細やかな指導は最初から
変わらないよ。体の中から浄化して来週も一週間頑張ります。またね

投稿: tama | 2009年4月18日 (土) 20時57分

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